雑文の掃き溜めで継ぎ接いだ世界から

創作小説「SEPTEM LAPIS HISTORIA」「ナイツロード 外伝」の連載、たまにイラストを投稿します。よろしくお願いします

SEPTEM LAPIS HISTORIA 004- おもしろいメカ、おそろしいメカ

「ということで」 『聞こえるー?』 「聞こえている」 二人が歩みを進めて間もない頃、さっそくジバから通信が入った。通信機の向こうのちゃらけた声はいつもと変わらないが、 『あー、あー、マイクテスト、マイクテスト、本日は天気晴朗なれども波高し……』 …

SEPTEM LAPIS HISTORIA 003- これまでの色々を聞いたあの人たちのこれから

「ずっとこれは思ってることなんだけどさー」 「はい?」 太陽は彼らの真上にあるが、その時彼らは陽光の恩恵を受けられない家の中にいた。一人は男、一人は女。テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている。 「どうしてうちの家には女の子がホームステイ…

SEPTEM LAPIS HISTORIA 002- 喧嘩バーゲンセール

「ハンマー?」 ジノグライはハンマーが働く工事現場の前に辿り着いた。建設の槌音が響くはずのいつもの雰囲気は何処へやら、今はしんと静まり返っている。と思ったが、 めり、という音がして金属が殴り飛ばされる音がした。 「……やってるやってる」 ジノグ…

SEPTEM LAPIS HISTORIA 001- 落ちてきた黒と悪意なき紅

彼らの住む惑星は、所謂春を迎えようとしていた。 一年が二十ヶ月で回り、一月が十八日で回り、一週間が六日で回り、一日が三十時間で回る惑星。 季節が五ヶ月ごとに移ろい、一つの月を持つ惑星。 五つの大陸を持ち、惑星の四分の三を占める海に覆われた惑星…

SEPTEM LAPIS HISTORIA 000

「よぉい……スタート!!」 轟音が嘶く。 閃光が奔る。 金属と金属が高速でぶつかった。衝撃波と火花を散らし、両の武装が離れる。 土煙がもうもうと上がり、二人の戦士の姿を隠す。二人は人工の砂が引いてある密室に居た。壁は硬質のゴムでできている。 やが…

ナイツロード 外伝 -輪廻の盾、悠久の翼- Phase.6 然様ならば(終)

赤黒い閃光が空間を走る。 ナナシアが振るった大鎌の軌道は、意図的にロッシュを外れていた。だが当のナナシアは、躊躇など欠片もない目で不可思議な少年を睨む。 「君はその“敵"と……どんな行動を起こすつもりでいたのかな?」 「私は反逆しようなんて思って…

ナイツロード 外伝 -輪廻の盾、悠久の翼- Phase.5 大鎌と杖

ロッシュがナイツロード作戦部の部屋の扉をくぐった時には、既に先客がいた。 臨時討伐隊の四人の面々と、 「来たようだな」 イルヴァース・テオドランド。ナイツロードが誇る老兵のKORであり、傭兵団随一の剣士である。死角の無い感覚の鋭さと恐ろしい精度…

ナイツロード 外伝 -輪廻の盾、悠久の翼- Phase.4 帰れぬ居場所

「どうして……」 疑問に俯き頭を抱えるのは、今度はロッシュのほうだった。対してリピは涼しい顔である。敵地に居るのに盗人猛々しいというかなんというか、とにもかくにも混乱がロッシュを襲って叩きのめしていた。 「あなたは何故またここに来ちゃったんで…

ナイツロード 外伝 -輪廻の盾、悠久の翼- Phase.3 からっぽの二人

静寂が喫茶店を支配する。 目の前の少年のような生き物から告げられた突拍子もない事実は、未だうるさい雨の雑音すらリピの意識から掻き消してみせた。知らず知らず再び強ばった顔をしていたのだろう、ロッシュが微笑む。 「あなたは悪くないですよ」 その気…

ナイツロード 外伝 -輪廻の盾、悠久の翼- Phase.2 敵か味方か

「……何故じゃ」 ロッシュからのコーヒーの誘いを受け入れることも突っぱねることも出来ず、曖昧な態度のまま促されるように、リピは椅子に座った。代わりに、口からは疑問が再度漏れる。 「何故わしを殺さなかった?」 「殺して欲しかったのですか?」 カウ…

ナイツロード 外伝 -輪廻の盾、悠久の翼- Phase.1 雨の日の話

原作:うまそうす騎士丼す 著:Xiba しとしとと雨が降り出した。 「あー、雨かー……」 ナイツロード。三千世界、森羅万象の戦士たちが集う傭兵団。理由も年齢も出自も能力も十人十色、多種多様な者たちが集う巨大な組織。広い広いユースティアの海を周回中の…